2014年8月4日月曜日

無人駅のアナウンス



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福島県の会津若松駅と新潟県の小出駅を結ぶ只見線です。
昔、幾度もこの列車に乗って、祖父母の家をたずねました。
祖父母が他界し、現在は叔父が守ってくれる家へ、先週久しぶりに行きました。
 今回は車で行きましたが、懐かしいこの列車に会うことが出来ました。

 只見線は、東日本大震災があった2011年の7月、福島と新潟を襲った豪雨で多大な被害が出て、分断されてしまいました。今も奥会津の6区間は復旧していません。
 津波でひどい損害を受けた三陸鉄道が、今年全線開通して嬉しく思いましたが、只見線は当面全線開通の見込みはないと聞きました。

 洪水後に立て直した無人駅は、以前と同じく四角い小さな小屋でした。
鉄道マニアの甥っ子に只見線の写真を撮ってあげようと列車を待っていたら、十何年か前、祖母に見送ってもらった一場面を思い出しました。
早め早めに行動しなくては気がすまない祖母は、私が乗る列車が来る三十分も前から駅舎へせかしました。ギリギリ人間の私はブーブー文句を言いました。
「おばあちゃん、早すぎ!あと一杯お茶飲んでも余裕だったよ。」
「いいべ、遅れるよりか早いほうが!」
ヒマなので、私は線路に下りて散歩したりしていました。
「あぶねえから、上あがれ!ひかれちまうんだから!」
「来たら逃げるから大丈夫だよ!」
祖母はやきもきするのですが、列車が来るのはちゃんと前もってわかるのです。
只見川にかかる鉄橋を列車が越えてくる時、一足先に目の前のレールを伝って『カチャン、ガシャン』という振動が響いてくるのです。その音は「列車が入ります。ご注意ください」というアナウンス代わりでした。その後、プアンと警笛を鳴らして列車は姿をあらわすのでした。

 祖母一人を草の生えたホームに残し、都会へ帰る列車へ乗るあの気持ちは、セミの声とともにしみついています。




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