2014年10月24日金曜日

豹変した山



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(イタリア・ソレント港からヴェスヴィオ火山 2014.4月)
先月末に御嶽山噴火が起きて以来、どうかすべての方がみつかりますようにと思ってニュースを気にしていました。
しかし、先週末で今年の捜索は中止になり、7名の方が山の上で冬を越すことになったことを知りました。
関係する方たちへ無神経に「今どんなお気持ちですか」とマイクを向けていた報道陣に、いつもながらやりきれなくなりました。
家族が当事者だとしても、彼らは同じ質問をするのでしょうか。
 
 2000年に起きた三宅島・雄山の噴火を思い出しました。
噴火が起きる数ヶ月前、私は雄山の山頂カルデラ・八丁平をハイキングしていました。
独りで何の届けも出すこともなく、休止している火山に何も不安を感じず、のんきに歩いていました。
 八丁平は緑に覆われた広々とした火口原で、鳥の羽ばたきがひびくほど静かな場所でした。
私はとても気に入ったので、また是非ちがう季節に来よう!と思いました。
 けれどその年の夏、雄山は山頂カルデラをふきとばして噴火したのです。
テレビに映った山頂は、大きく陥没した穴から噴煙を上げ、八丁平は消えていました。

 そんな記憶もうすくなってしまい、私はその後もいろいろな火山を訪れています。
十勝岳、蔵王、那須連山、霧島連山…今登っている山がどんな状態の火山であるか意識したかと聞かれると、ほとんどしていませんでした。
 この一ヶ月御嶽山のことを考えながら思いました。メディアがとりあげなくなり、噴火した記憶がうすくなってしまっても、豹変する山があることを一生忘れないようにしようと思いました。




2014年10月5日日曜日

震災で消えた小さな命展・・・27



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(浄瑠璃寺参道の土産店から来た鹿さん文鎮)
奈良市の「ギャラリー美々風」で10月7日から13日まで複製写真展が開かれます。
関西方面では京都や神戸、大阪などで幾度か開かれていますが、奈良は初めてです。
週末の連休も含みますので、たくさんの方が訪れてくださることを期待します。
 最近訪れていないのですが、奈良は好きな場所のひとつです。
まずは、大好きな鹿さんたちと必ず会えるのが幸せです。ならまちや東大寺周辺も好きですが、若草山の奥や、京都府との境の当尾の石仏・その先の浄瑠璃寺の九品仏と、赴きある境内。
とりつかれたように何度か足を運びました。


 今日は10月5日。東大寺勧進所・阿弥陀堂で「五刧思惟阿弥陀如来坐像」が一年に一度公開されます。毎年この日だけ見られるとあって、たくさん人が訪れます。私も以前うかがって拝観させていただきました。東大寺のホームページにはこんなふうに書いてありました。
『五刧思惟阿弥陀如来は、阿弥陀如来の異形のひとつで、経説によると四十八の大願を成就するために永い間、剃髪をすることもなく坐禅・思惟していたので、このような髪形になったという…。』
このような髪形とはどんなものかというと、つまり『アフロヘアー』みたいな頭の如来様なのです。うかがう前は、アフロヘアー?と好奇心にあふれていたのですが、実際その如来様にお会いしたら、とてもほっとしたような懐かしいような…。無宗教の私ですが、とにかく心が落ちついてひとめぼれしてしまいました。

 私が訪れたある年のご開帳で、一つ残念なことがありました。仏像マニアらしき年配の男性が、如来様のお顔や体に、丹念に懐中電灯を当てて観覧していたことです。ライトをあてながら、周囲の人々にも得意げに説明していました。瞳にはめ込まれているのは○○だとか、螺髪(らほつ)の数はいくつだとか…。あくまでも「貴重な仏像」としての扱いに私自身は不愉快でしたが、当の如来様はそんなことなど気にしない大きな心を持っていらっしゃるかもしれません。

 せっかく一年に一度外の光が入る阿弥陀堂が、今日はあいにくの天気でうす暗いでしょうね。
ホームページに、撮影やスケッチ、そして懐中電灯の使用を遠慮してくださいと記述がありました。
こんな注意書きを読まなくても、久しぶりに姿をみせてくれた如来様に気づかいができたらいいなと思いました。