2015年3月30日月曜日

震災で消えた小さな命展・・・29

三鉄駅前でうさぎさん発見
 昨日まで岩手県の大槌町で3日間開かれていました。
私は搬入の日と初日だけお手伝いしましたが、『命展宮古周辺チーム』の方々のおかげで、展示作業はあっというまでした。
久しぶりにみなさんとお会いできて、嬉しかったです。
 
命展3で絵になった子達と会うのは、初めてです。
静かなホールで、ゆっくりと絵とエピソードをみせていただきました。
 震災から4年を経た現在ですが、申し込まれた方からのお手紙にあふれる感情と震災の描写は鮮烈に心へつきささります。
やりきれない思いや、ずっと抱えてらっしゃる後悔が押し寄せてきます。
 津波から逃げ延びたけど、避難生活中に独り家出してしまった娘さんを探すお母様のお手紙もあります。それを読むと、今も連続して途切れることのない悲しさとつらさをつきつけられます。

 明るい笑顔でお話してくださる宮古チームの方たちも、心の中にあの時のつらさをいくつも抱えておられます。
 急ピッチでかさ上げや建築工事が進む釜石の街も、早朝散歩した裏道には大きな亀裂や、曲がった鉄柱がありました。
たくさん傷を抱えながら一生懸命前進している姿を感じます。

 搬入の日、会場の大槌マスト2階広場で、何か展示をしているようなので行ってみると、津波で流され迷子になっている写真を、持ち主さんへお返しするための写真展示でした。
表面が白く削り取られて見えにくいものもありますが、丁寧に泥をぬぐって乾かしたプリント写真たちには、楽しそうなスナップ風景が多く写っていました。
「あ、ここでもやっているね。見ておこう。」
知っているお顔がいないか、立ち寄って自然に見ている方の言葉にどきっとしました。ここにいる方たちのほとんどが、日常を突如はぎとられた経験をされているんだな、と改めて思いました。
 
 絵の子たちとの初対面、宮古チームの方たちとの再会、傷をつつんで前進している土地で、いろいろ心の奥底をうごかされた2日間でした。

2015年3月19日木曜日

緑色のかわいい鳥


 寒さがゆるんだ朝、近所の畑地や藪から様々な鳥の声が聞こえました。
いつも元気なヒヨドリを始め、ケンケン!(キジ)・ホーホケキョ(うぐいす)・キョキョキョ…(つぐみ)
それから、チョットコイ!とコジュケイも高らかに鳴いていました。
 写真は、椿の大木が繁る、千葉県旭市の史跡公園で撮りました。すばっしっこくてとても追えないメジロが、偶然真ん中に写ってくれました。花の蜜を舌でせっせと吸い取っているようです。黄緑色の美しい身体が、濃緑と赤の椿を転がるように飛び回っていました。
 メジロよりか濃い緑色の鳥で、アオバトという鳩がいます。森の深いところに住んでいるので、山で姿をみることは難しいですが、集団で海水や温泉水を飲みにくることが話題になったこともあります。繁殖期でも草食を続けるので、体に必要なミネラル分を補給するために海水などを飲むらしいですが、いろいろ生態に謎が多いのでした。
 彼らの鳴き声がまたおもしろい、というか素敵です。
「アオアー…オーアオーアオー…」尺八か低めのオカリナを物悲しく鳴らすような声で鳴きます。
 私は、神奈川県大磯町の海岸で、海水を飲みに来ていたアオバトグループを見たことがありましたが、声はなかなか聞けませんでした。
 初めてその声を聞いたのは、丹沢山塊の桧洞丸(ひのきぼらまる)という山の中。山ツツジの咲く春、夕暮れになる頃たちこめた霧の中です。ミズナラやカンバの深い森の下山道で、低く聞こえたその声はかなり神秘的で、感動しました。
 ところが、アオバトは地方によってマオドリ(魔王鳥)と呼ばれ、不気味な鳴き声の不吉な鳥として伝承されているそうです。
 山中でマオドリと出会ったり声を聞いたりするのは、不吉なことが起きる前触れだというのですから、アオバトファンの私もびっくりでした。
 その伝承を最初に言い出した人が、もし素晴らしいレンズの双眼鏡であのかわいい姿を見ていたら、そんなことを思わなかったのでは…?
森の奥に住んでなかなか姿を見ることが出来ない鳥の、声のみがひっそりとひびいていたから、想像がふくらんで不気味な鳥になってしまったのでしょうか。
人間は、未知の事象が怖くて、調べてはっきりさせないと安心できない生き物なのかもしれません。
怖くて怖くて、だから未知であったり解りあえぬ事を、否定や攻撃したくなるのかもしれません。

2015年3月6日金曜日

震災で消えた小さな命展・・・28


今日から震災で消えた小さな命展・3が始まりました。
第1回からお世話になっている宮城県石巻市のナリサワギャラリーさんが
スタート会場です。
絵になった子たちが、申し込まれた方たちと会いながら全国を巡回する旅が始まりました。
 私が今回描かせていただいた子は、ミドリフグさんでした。東南アジアなどの熱帯汽水域に暮らすそうです。自然界では会えないので、水族館で泳いでる姿を見せていただきました。
  ミドリフグさんに会ったことはありませんが、熱帯の海でシュノーケリング中、フグ仲間と出会いました。サンゴが途切れた白い砂地の浅瀬で、さまざまな種類のフグさんたち(ミゾレフグ・コクテンフグ・ハコフグなど)がひれを小刻みにふるって泳いでいました。勝手に「フグ広場」と名づけ、そのかわいい姿をみせてもらっていました。

 ミドリフグさんについて調べていたら、ショッキングな出来事につきあたりました。
彼らは小さなガラス瓶につめられ、ゲームセンターでクレーンゲームの景品になっていることもあるようです。当然衰弱し、命を脅かされた状態で店頭に置かれます。
運よくキャッチされ、さらに運よく、それがちゃんと飼おうという方であれば、奇跡的に助かるかもしれません。けれどほとんどが店頭で命を落とし、何の準備も飼い方も知らない人の手に渡る可能性があるでしょう。
 
人間は、日々さまざまな命をいただいて生きているのですから、このような無駄な犠牲を増やさないでほしいです。

 命を命と思えないような人にこそ「小さな命展」を見に来てもらいたい、と思いました。小さな命がどれだけご家族に大切にされていたのか、愛情に包まれていたのかを感じたら、きっとあんな扱いはできないはずです。

2015年3月1日日曜日

菜の花の道


近所にこんなのどかな道があります。用水路と田んぼにはさまれた一本道が長く続き、
その畦側にはこのような菜の花が列になっています。この季節に通ると嬉しくなる道です。
 

 けれどこの道、一年に数回、悲しい気持ちになる道になってしまいます。
除草剤で褐色に枯れた草の列が、むれたような臭いとともに連なるのです。

 草刈機で刈る労力が無いから仕方ないだろう…農道沿いの農家の方はそう言うかもしれませんし、
今の除草剤はちっとも危険じゃないんだよ、とマスクもせずに散布する方をみかけます。

 除草剤の種類は多く、近所でも、ごくふつうに庭の軒先で使用されている方がいます。
それほど害がないんじゃない?と思っている方が多いのでしょう。
けれど、散歩しているワンちゃんに害がおよんで、命を落としてしまったという話を聞ききました。
体の大きな人間だって、蓄積されればやはり危険なものになるでしょう。
草が枯れるのですから、害がないはずはありません。

 その道沿いで芽吹くことを止めた草花がたくさんありますが、菜の花は除草剤に負けず、
毎年道を彩ってくれるようです。
 菜の花たちは、耐性を持って強く進化してくれているのでしょうか。
毎年再会すると、ほっとします。でももし、見えないはずの有害物質がはっきり見える能力があったなら、
吸い込んだ毒素が花の列を染めているのも見えるかもしれません。