2015年5月9日土曜日

震災で消えた小さな命展・・・31

連休最後の5月6日、一日だけ開催した宮城県多賀城市文化センターへ、命展とフジコ・ヘミングさんのコンサートへ行って来ました。ホール横の展示場所は細長くて天井が高く、とても落ち着く空間でした。いつもたくさんお世話になっている仙台のボランティアの方たちとお会いでき、素敵な空間で過ごせたことが嬉しかったです。

 フジコさんのピアノは以前から大好きで、ミュージックプレーヤーにいつも持ち歩いているのですが、生で聴くのは初めてでドキドキしました。最初の方の演奏曲が少し緊張されているような印象だったので、観ている私まで緊迫してしまったのですが、3曲目あたりからそのような空気は霧散しました。
 滑らかにやわらかく、ものすごく芯が強くて安心する…心の奥が熱くなる演奏でした。コンサートやライブというものにほとんど行かない私ですが、来て本当に良かった、とつくづく思いました。
 丸く穏やかな背中と、決して長くない腕と指は、観ているかぎりでは激しく動いていません。むしろゆったり静かなのですが、奏でる音は細分化し、すばやく鮮やかにホールをかけめぐるのです。
 不思議と感動につつまれたままコンサートは終わり、運よくフジコさんと握手をしていただくことができました。
 その時、フジコさんが弾いていたグランドピアノが、大きな黒い動物のように思いだされたのです。フジコさんは弾いていたのではなく、ピアノみたいな動物を、ゆったり優しくなで続けていたような気がしました。
 毛のかたまりをシャシャッとほどいたり、浮いた抜け毛をふわっと宙へとばしたり、こった背中をぐいっと押したりするように。
 フジコさんの手は、ぽんわり丸くて分厚く、とてもあたたかでした。どうか、いつまでもあのあたたかい指から、優しくて強い音が世界へ広がりますように願っています。フジコさんが『命展3』のために描いてくれた魅力ある猫ちゃんのような、幸せそうな命が増えますように、祈っています。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿